トキと同じように、日本のコウノトリも一度絶滅して復活した鳥だということをご存知でしょうか?
私は知らなかったのですが、今、日本にいるコウノトリは、トキとおなじように、外国から譲り受けた鳥の子孫なのだそうです。
でも、じゃあどうして私たちがトキの絶滅ばかり知っているかというと、日本のトキと中国のトキはDNAが違うのに対し、コウノトリは渡り鳥なので、同じDNAを持った鳥が海外にもいたということのようです、どうやら。
さだまさしさんにも、「ニッポニアニッポン」
という名曲がありますね。
コウノトリは1971年に、トキは1981年に、日本の空から消えたそうです。
でも、DNAの違いで、同じように絶滅した鳥に、こんなにもわたしの認識の違いがあったことに、まず驚きました。
で、「げんきくん物語」です。
この本は、一度絶滅してしまった日本のコウノトリを復活させるためにロシアから譲り受けたコウノトリの何代目かの子孫で、福井県では50年ぶりに孵化したコウノトリのげんきくんのドラマティックな半生にスポットを当てて書かれた本です。
筆者は「兵庫県立コウノトリの郷公園」の園長の山岸哲さん。
「兵庫県立コウノトリの郷公園」は、今も絶滅危惧種であるコウノトリを再び日本中に増やすために尽力されている兵庫県豊中市にある施設です。
研究者でもある山岸さんは、きちんとしたデータに基づきながら、げんきくんの心の声を想像しながら、物語を綴られています。
福井県の施設でのげんきくんの誕生。
翌年、放鳥され、野生のコウノトリとなったげんきくん。
島根県雲南市でのななちゃんとの出会いと4羽のヒナの誕生、子育て。
その直後の誤射によるななちゃんの急逝。
ヒナの命を守るため、ヒナを保護することにした雲南市の決断。
施設によるヒナの捕獲。
ヒナの成長。
雲南市での親子の再会。
新しい恋を受け入れるまでのげんきくんのかたくなな気持ちと、げんきくんの心が解けるまで辛抱強く待ったもう一羽のコウノトリ、ポンスニ。
そんなことが事実に正確に、山岸さんのあたたかい筆で書かれています。
それにしても、ヒナを守りきれず連れ去られたげんきくんの心の傷はどれほどでしょう。
鳥は忘れることができる生き物なのでしょうか。
私たち読者は、ヒナが保護のために捕獲され、施設で元気に育つことを知っていますが、げんきくんはそんな重大なことを知りません。
ヒナを救うための救出者は、げんきくんにとってはヒナを盗む捕獲者で、目の前2メートルに迫るまでがんばっていたげんきくんですが、守りきれず飛びたってしまったその痛みを、げんきくんは忘れることができたのだろうかと想像すると、心が痛みます。
このげんきなこブログにも昨年書いたのですが、昨年の4月、雲南市の成福寺さんというお寺にライブのお声かけをいただいたあと、檀家の方から「コウノトリを見てかえりんさい」と言われて立ち寄って出会ったのが、げんきくんでした。
私たちは、そこで生まれて初めてコウノトリを見ました。
小学校のグランドの端に、電柱よりまだまだ高くそびえる棒の上に巣があって、そこに一羽のコウノトリがすっくりと立っていました。
奥出雲の春。
夕暮れの空に立つコウノトリは、神々しくて目が離せませんでした。
じっと見ていると、まっすぐ立ったコウノトリの足元に、時々小さなヒナの頭がモグラたたきのように覗いたり隠れたりしていました。
今思うと、あれはツライことをいくつもやり過ごしたげんきくんの姿だったのだなあと思います。
げんきくんのことを書いた本があると聞いて、ずっと読みたいなあと思っていたのですが、一年たって、ようやく読むことができました。
出雲市立西小学校のサイトから、げんきくんの最近の写真も見られますから、よかったらご覧ください。
げんきくんは、今年もまた元気に子育て中のようです。
(きなこ)
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