「世情」

流しっぱなしにしていたユーチューブから、中島みゆきさんの「世情」が流れてきました。

オトザイサトコさんがカバーされた「世情」。

中島みゆきさんの歌のカバーでこんなにいい歌を初めて聴きました。

 

そして突然、頭に立ち上がってきた風景。

私が運転し元気さんが助手席にいて、彼は後の席にいました。

就職に失敗して、つなぎのために大学院に進学したけれど、それでもやっぱり落ち続けて、最後の一つの不採用通知が届いたあとに、ふらりと遊びに来たのだったと思います。

３人でどこへ行こうとしていたのか、どんな話をしていたのか記憶にないのですが、バックミラーに映る彼の表情の暗さをチラチラと見ながら運転していたことを覚えています。

 

素直なくせにひねくれていて、優しすぎて人あたりが悪くて、正直に生きすぎて人を傷つけて…。本物の宝石の原石のような彼の真価を5分10分で見出してくれる会社がこの日本に１つもないことの悔しさを感じながら、ハンドルを握っていました。

 

無作為に流していたクルマの音楽が、中島みゆきになりました。

「世情」。

椅子の背もたれに頭をもたせて上向いて、黙った彼は、バックミラーの中、泣いているように見えました。

 

そのあと、彼は大学院を中退し、下宿を払っていなくなってしまいました。

 

心配して心配して、半年たったのか、一年経ったのか、外国からエアメールが届きました。

彼は異国にいました。

彼の才能は日本ではおさまらなくて、彼の心は日本では息苦しかったのでしょう。

 

彼が今幸せなのかどうなのか、私は知りませんが、彼のことを思うと、心が苦しくなります。

私も、彼が日本の中に居場所を持てなかったことに繋がる人間の一人なのだと苦しくなります。

 

雨が続いていますね。

どうか被害がありませんように。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（写真yama-p)（きなこ）

 

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 https://youtu.be/KJb_ZaT-m1M