幼い頃、あこがれていたことがいくつかあります。
叶ったこともあれば、叶わないことも。
オオオニバスの葉っぱに乗るのも憧れの一つでした。
オオオニバスが世界で一番大きい葉っぱと知ったのは、平凡社の子供図鑑だったか。
池だか沼だか川だかで、色の黒い子供たちが大きなお皿のような葉っぱに乗って笑っている写真があって、びっくりして憧れていました。
私も乗ってみたいなあ。
憧れは憧れのまま大人になり、すっかり忘れて、月日は巡る糸車。
小学生の子の親になっていた夏休みの終わりの昼ふけのこと。
ふとめくった古いタウン誌に
「オオオニバスに乗ろう!」
という植物園のイベント記事を見つけました。
ふいに蘇る、幼い日のあこがれ。
イベントは、その日が最終日でした。
あわてて子供を引っぱって、車を走らせました。
閉園時間が近い植物園は、ひとけもまばらで、わたしたちは目的のオオオニバスに直行。
セーフッ!
ところが、子供は葉っぱに乗れる体重制限を5キロほどオーバーしていたのです。
恐る恐る
「体重が、少しオーバーなんですけど…」と伝えたら、職員さんは子供を眺めて、
「ああ、いいですよ。あなたたちで、たぶん最後ですからね。」
と、言ってくださいました。
優しい職員さんでよかった!
ホッとしながら、憧れのオオオニバスはどこ?とプールを覗けば…、なんと!
あちらこちら破れて、ちぎれて、哀れな葉っぱが一枚、沈みかけながら浮かんでいます…。
これが憧れのオオオニバス???
きっと夏休みに、何百人もの子供を乗せたのでしょう。
オオオニバスは、子どもの(親の?)夢の代償として、くたびれ果て、無惨に破れてしまっていました。
よく見ると、オオオニバスの下には薄いシートのようなもののが敷いてあり、そのおかげでなんとか沈没を免れているのでした。
かわいそうなオオオニバス…。
…でも、重量オーバーの子が、これに乗って大丈夫???
憧れは一転、不安に。
とはいえ、今更「やめておきます」とは言えない、私は気の弱い母親でした。
何がなんだかわからず引っ張られてきた子供は、わたしの横で、緊張で固まっていました。
二人の職員さんはプールに入ると、一人が子供を抱ききかかえ、もうひとりが葉っぱを支え、二人がかりでオオオニバスに乗せてくださいました。
そして肩で息をしながら親切に、
「記念写真を撮りますか?」
と尋ねてくださったので、なるべく急いで写真も撮らせていただきました。
パシャ。
オオオニバスの上で、ただひたすら緊張した顔の子供の写真が、今もアルバムに残っています。
理想と現実はいつも少し違うようで。
わたしの憧れが、少し形を変えて、叶ったときの話でした。
(写真、yama-p)(きなこ)
写真をクリックしていただくと、じゃがいもスープをお聴きいただけます。
よかったらお聴きください。
今日がいい日になりますように♪
https://youtu.be/_OSPfuXJNvY
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